「ジャニーズジュニアよっ、ジャニーズジュニアが1人混じってるわ!」
っと叫んだのは、確か7日の1部だったと思う。

 この回の桜井は、なんだかわかんないけどとにかく全身から「俺楽しい!」オーラを出しまくっていた。遊んで遊んで遊びまくって、アンコールラストのメンバー紹介のあたりになっても正面のステージになかなか戻らず、花道で遊びほうけているところを松本に首ねっこをつかまれて5歩ほど連行され、それでも遊びやめずにいたらとうとう正面ステージに早々に戻っていた二宮からマイクを通して「はやく〜」と言われる始末である。
「ジャニーズジュニアよっ、ジャニーズジュニアがいるわ!」
「きっとキンキキッズのコンサートだと思っているのよ。光一くんが最後にしゃべってくれると思ってるんだわ奴わ!」
とか言ってすげー笑った。
 「そうか、桜井楽しいか!よかったな!」みたいな気分であった(笑)

 その光景は、単純に楽しかった。
 そして、ものすごくうれしかった。

 桜井翔はその昔、外周大王みたいな人だった。
 とにかくじっとしていないというかなんというか、外周で誰かに出会うと何かをしないではいられない人だった。熱心に客席に手を振る松本を冗談で落とそうとしたら、小さい時代の松本が本当に客席に落ちそうになってめちゃめちゃアセっていた、というようなこともあった。外周だけじゃなくて、ジュニア紹介の時も自分の出番じゃない時はそのへんの人達を巻き込んでこそこそと熱心に遊んでいた。
「この人、本当にジュニア100人くらいと友達なんじゃないの?」
と、当時の私はかなり真剣に思っていたりしたこともある。どんなにすみっこの方にいても、外周をただまわっている時でも、なんとはなしに「俺楽しい!」空気を撒き散らしているような人で、いつ見ても本当に、本当に楽しそうな人だった。
 桜井翔という人は。

 「はやく〜」とか言われてるのを見て、なんとなく頭に浮かんだのはその外周大王の頃の光景だった。「俺楽しい!」オーラを撒き散らすだけ撒き散らしまくっていた、あの頃の光景だった。
 語弊があるかもしれないが、丸2年たって、肩の力が抜けて、色々好き勝手できるようになったのかもしれないなぁとも思った。
 そして結論として、やっぱり、「よかったな!」と、思った(笑)。


 *****

 私は、勝手にこの人のことを同志だと思っているようなところがある。

 もー何度も何度も書いているような気がするのでなんだが、うっとおしいと自分でも思うけどまた書いてしまえば、あのフライデーの一件以来そう思っているようなところがある。

 あの後、桜井はやめなかった。
 やめなかった、と表現するのは、それは当時私が「翔くんはやめるだろう」と思っていたからだ。誤解を恐れずに書いてしまえば、「やめてほしい」ぐらいまで思っていた。本気で。
 そこに、いてほしくなかったのだ。誰あろう「翔くん」には。
 そんな場所にい続けてほしくなかったのだ。
 他の誰でもなく、「翔くん」にだけは。
 私はめちゃくちゃ桜井のファンだったわけではないから余計、「翔くん」に期待するものはたくさんあった。「翔くん」にはこうあってほしい、という願望もたくさんあった。だから「やめてほしい」と思った。こんなことがあってまで、そこに残る人であってほしくないと思っていた。

 でも、結局桜井はやめなかった。
 「俺楽しい!」オーラを出す代わりに、やたらおっかない顔をして、眉間に皺がよったまま、桜井はそこにいた。それを遠く遠くに意識しながら、「どうしてやめないのだろう」と私は思っていた。でもその問いは自分自身にも向けられているもので、「どうしてやめないのだろう」と私は自分に対しても思っていたのだ。
 やめりゃいいじゃん。あたしも。もう、こんなもの見るのもやめて。
 実際、その時はあまり見る気もしていなかったし、そのまま見なくなる可能性だってあったはずだった。私には。

 でも、そこには残っている人達がいて、そしてその中に桜井もいた。
 そのまま見なくなる可能性だってあったはずのその場所に私を引き戻した理由はたくさんあるのだけれど(その最たるものは松本がキーボード弾いてたことなんだけれど)、桜井が「やめなかった」というのも理由のひとつに入っている。
 学校のこともあるし、桜井がある一定の特殊事情の下にいた部分はあったかもしれん。だけど、そういうことを抜きにして、彼が「やめない」という選択をしたこと、それが私には大きかった。
 「翔くん」がやめないんだったら。「翔くん」がまだいるって言うんだったら。
 だったら、その場所はそんなに捨てたもんでもないのかな、と。
 「翔くん」が残るって言うんなら、そこはそんなに悪いところでもないのかな、と。
 そう思える程度には、私はこの人のことを信用していた。
 会ったこともないこの人のことを、その程度には、信用していたのだ。
 そして、今でも多分、その程度には信用しているのだ。
 きっと、これからもそうだと思う。
 これからもずっと、その程度には信用していくんだろうと思う。
 それは、この人が「翔くん」だからだ。
 この人が信用に足ると思う理由はそれだ。それだけだ。
 彼はこの先も「翔くん」であり続ける、そういうこの人のことを、私は多分信用している。
 これからも。


 *****

 この冬のツアー中、松本の右足がまた曲がらなくなったのは1月2日のことだった。

 いや、心配ですとか、そういう話ではなく。
 その実状など私はじぇんじぇん知らないが、春のツアーも途中の名古屋でやっぱり右足が曲がらなくなったことがあったりして、そんで今回も症状はまったく同じもののように見えたから、あぁそうなのかなと思っただけの話なのだが。
 今回はいつやったのかもよくわからなくて、ただ2日に気が付いた時はもう「あぁ、右足にテーピングしてきましたね」という状態だった。でもその症状は別にただ単純に右足が曲がらないというだけで、足をまっすぐ上げることはできるし、ジャンプするのにも支障はない。歩けるし、走れるし、躍れる。こちらから見ている分には、ただ、曲がらないというだけの症状なのだ。
 夏の時はこっちも死にそうになった。
 春の時は、またそうなった時本人ちょっと落ち込んでいるように見えた。
 でも、今回は別に全然そんなこともなかった。な〜んにも変化はないように見えた。
 だから、もしかしたら本人も慣れてしまったのかもしれないなとも思った。本人が元気で笑っていられるなら、右足が曲らないことは特に不利にはならない。テーピングした次の日はもう全然ヘーキで足は曲がるようになるのも春で実証済みだったので、そのへんのヘンな安心もあったのかもしれない。
 …ただ、今回はちょっと次の日平気で足曲がりすぎで、本人元気すぎだったという噂もある(笑)

 さて、私は桜井の話をしようとしている。

 その1月2日、MCの前の時点でもう松本の足はヘンだった。が、特にそれがどうということはなく、多少出てくる場所を変えるとか、春の時もそうだったようにMCで着替える隙間にテーピングをしてくるのでその後出てくるのが遅くなるということはあったが、それ以外は滞りなくコンサートは進んでいた。
 パリコレ、と自分内で呼んでいる台風ジェネレーションの後のダンスのみの場面、さすがにちょっと気になって私は真剣に松本を見ていた。通常他の誰かが踊っている時はその誰かを見る時でも、とにかく集中的に松本を見ていた。
 まず5人で踊って、そのあと1人ずつで踊る。それから、智以外の4人で踊り、相葉二宮で踊り、松本桜井で踊る。この、相葉二宮で踊っている最中、松本と桜井は暗がりの中を上手にむかって移動している。
 この、移動の時を見ていた。
 桜井が前にいる。松本が後ろにいる。
 松本が走る体勢になった時、すっと桜井の手が後ろにむかって伸びた。
 ……ちょうど、リレーでバトンをもらう時みたいな。そんな感じで、桜井が前をむいて小走りになりながら、すっと手だけを後ろに出した。それで、走る体勢になっていた松本はダッシュするのをやめた。
 「走るな」と、手で言っているのだ。
 それは頭でわかっていたが、それを見た時、瞬間的に「道案内」をしているのかと私は思った。…笑っちゃうけど本当に(笑)。バトンをもらうように後ろに伸びた手はなんとなくひらひらしているようで、こっちこっちと道案内をしているように見えたのだ。ステージの真ん中から上手に移動するだけで道案内もなにもあるかーい!と頭ではわかっていたが、こっちこっち、と手が誘導するみたいに動いているように見えたんだよね…。
 そして松本はその手に止められるままに走らず、少し急ぎ足気味に上手に行き、2人で踊り、踊り終わった後桜井の手は松本の腰をちょっと叩いた。今度は「大丈夫?」とでも手が言うように。
 それに対して、松本はぽんっ、とやたら元気に桜井の背中を叩いて、先に走って移動していった。

 気がついたのは次の日になってからだ。

 その場面、私はやっぱり真剣に移動中まで松本を見ていた。そして、ようやく、
「この場面、本当は移動中に松本がダッシュで走って桜井を抜かして、上手の奥の立ち位置に行く」
ことに気がついた。
 と、いうことは。
 2日は多分、上手の立ち位置が逆だったのだ。逆に、したのだ。桜井が。
 松本が走ろうとするのを手だけで制して。
 手だけで「走るな」と言って。
 そうして、自分が奥に立ったのだ。
 だってその方が、松本の移動距離が短くなるから。ダッシュしなくても大丈夫になるから。曲がらないだけだから平気だとでもいうように、松本は普通に走ろうとしていたから、実際走ってみせていたから、だから余計「走るな」と。

 私は「翔くん」のことを信用している。
 会ったこともないこの人のことを、多分信用している。
 この時「走るな」と手だけで言った、その後ろに伸ばした手の長さの分くらいには。
 そのくらいには、この人のことを、きっと信用している。


 *****

 あの外周大王が、今日でハタチになっちゃうんだそーです。
 …信じらんないね!(笑)
 『良質』で『品のある』人に、きっとなれるよ貴方なら。
 そしていつまでも、客席から走れ走れとコールがおこっても、「俺ぜってーやんねーよ!」と本気で階段にはりつくよーな、そんな愛しい腰抜けのヒトであってくれ!

 おたんじょうびおめでとう。

 おめでとうおめでとう!


 【2002.01.25】


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